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2017/18V・プレミアリーグは、10月21日に女子は仙台、男子は東京で開幕!

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-連載-2016/17Vリーグコラム 第3回

2016/17V・プレミアリーグ男子大会開幕の地、大阪・なんばでV・プレミアリーグ男子開幕記者会見が開催!

2016/17シーズン、V・プレミアリーグ男子、女子には新指揮官がチームを索引しているチームがあるが、その中でも男子は堺ブレイザーズ、そして女子はトヨタ車体クインシーズの新指揮官にそれぞれ監督してのプレミアリーグの采配について訊いた。

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堺ブレイザーズ 真保網一郎監督

10月23日、大阪市中央体育館で迎えた開幕戦。
「緊張しました。コーチの頃とは全然違いますね」
柔らかな笑顔でそう振り返ったのは、今シーズンから堺ブレイザーズの新指揮官に就任した真保綱一郎監督だ。
コーチとしての経験は豊富で、母校の駒澤大学高校を皮切りに、神奈川県の藤嶺藤沢高校や横浜市立港商業高校(現:みなと総合高校)など高校での指導を経て、チェコ、イタリアのクラブチームで経験を積み、04年からはV・プレミアリーグ女子のNECレッドロケッツ、久光製薬スプリングス、07年からは男子のパナソニックパンサーズ、14年からはベルリンのクラブチーム、さらに全日本男子チームのコーチを務めるなど、数多くのチームや選手にコーチとして接してきた。
豊富な知識と、データに基づく戦術遂行など、コーチ時代に培われたスキルは実に高いのだが、その背景にはこれまで接してきた多くの「監督」がいた、と真保監督は振り返る。 「葛和(伸元)さんや吉川(正博)さん、眞鍋(政義)さん、南部(正司)さん、チェコでは(フリオ)ベラスコ(現:アルゼンチン男子代表監督)さん。本当にトップと言うにふさわしい、素晴らしい方々のもとでコーチを務めることができたのは、本当に貴重な経験でした」
いつか監督にもチャレンジしてみたい。そんな思いが形になったのが今シーズン。新たな変化を求めるブレイザーズの監督に就任した。
これまで、対戦相手として見て来たブレイザーズは「よくも悪くも豪快なチーム」という印象が強かった、と言う。
「強いサーブとブロックが武器のチーム。勢いに乗せたら手に負えない、とずっと思っていました」
だが一方で、サーブやブロックが機能しても、最後の1本で相手のブロックに屈する場面も目立った、と真保監督は言う。
「サーブ、ブロックという武器に加えてアタック力を強化したい。打てる場面ではもちろんいいボールをしっかり打って勝負してほしいですが、そうでない時もあります。ここは苦しい、という時も無理に打つのではなく、我慢強く、賢く、スマートに。一発で決めに行こうとするのではなく、選択に自信を持ってプレーしてほしい、と選手に伝えました」 6月のリオデジャネイロ五輪最終予選を終えて間もなくチームに合流し、すぐさまアタック力の強化に努めた。新外国籍選手として獲得したウォレスに期待したのもまさにその面であり、1本で決めずとも、粘り強くリバウンドを取りチャンスをものにする技術を持ったベテランのプレーを手本としてほしい。そんな狙いがあったと言う。
もともと高いスキルや経験を持った選手が揃い、何よりリーグ随一と言っても過言ではない熱さという武器を持つブレイザーズだが、近年は優勝争いから遠ざかり、選手たちも「何かを変えたい」と変化を欲していた。
「昨シーズン、一昨シーズンと悔しい思いをしてきて、1人1人が『変わりたい』とすごく強い思いを持っているので、こちらが発信することに対して、非常に前向きに取り組んでいます。選手が全力を出せる雰囲気をつくれるよう、まずは空気をポジティブに。僕は口達者でもありませんし、カリスマでもない。何度も繰り返し、繰り返し言い続けるだけですよ」

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1レグの7試合を終え、2勝5敗と黒星が先行する苦しい展開ではあるが、1人のエース頼みになるのではなく、組織で戦うスタイルを目指して戦うチームである以上、取り組んできた成果はすぐに結果として結びつくほど容易いものではない。
「1人1人が自分の仕事をしてチームとして戦わないと浮き沈みが大きくなります。たとえ勝っても負けても、これができなければ負ける、これができれば勝てるというのをしっかり全員が把握しながら戦って行きたいと思っています」
チームとして成長を遂げながら、一歩、一歩進化していく。これまでのブレイザーズが持つ武器や強みは変えずに、さらに新たなスパイスを加える。
「チーム全体、人間的なレベルが高いチームは勝てる。そのためにも、まずは自信をつけてあげることができれば、このチームの良さである勢いもプラスしていけると思いますので、一喜一憂せず、チームとして成長していきたいと思います。勢いや熱さ、迫力あるプレーはもちろん継続しつつ、そこにきめ細かさをプラスして、勢いと落ち着き、その両方を兼ね備えたチームになりたいと思って取り組んでいきますので、これからも堺ブレイザーズに注目して下さい!」
真保監督率いる、新生堺ブレイザーズの巻き返しはこれからだ。



 

トヨタ車体クインシーズ 多治見麻子監督

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ジャージ姿で、ベンチとコートの間に立つ。
時には手を叩いてチームを鼓舞し、苦しいラリーを制して得点に結びつけた時は、ベンチのスタッフや選手と共に喜ぶ。
現役時代と変わらぬ、「凛」とした存在感を放つのが今シーズンからトヨタ車体クインシーズを率いる多治見麻子監督だ。
「現役生活は長かったですけど、指導者としてはまだまだわからないことばかり。1試合1試合、指揮を執りながら勉強している過程なんです」
爽やかな笑顔も、現役時代と同じだ。

八王子実践高校卒業後の1991年に日立ベルフィーユ※に入部し、以後、日立で10年、パイオニアレッドウィングスで10年、日立リヴァーレ※で1年。21年という長い時間、現役選手としてコートに立ち続けた。
北京五輪を終えた後、「長く現役をやってきたので、もう少し現役をやっていくうえでも、辞めた後を考えても勉強になるかもしれない」と考え、日本体育協会公認バレーボール上級コーチの資格を取得した。そのため、チーム事情に伴いパイオニアで監督登録されたこともあったが、実際に指導者としての経験はない。2012年の現役引退後は「現場でやるべきことはやりきった」という思いも強くあり、意図的に現場からは離れていたが、バレー教室や地元、東京国体の実行委員として裏方も経験したことが1つの転機になった。 「受付とか、荷物運びとか、実際に自分が経験して、今まで自分たちが当たり前のようにやってきたことは、こんなにたくさんの人たちがいて、いろいろな面で支えてくれていたからできるんだ、と改めて、ものすごく勉強になりました。今まで知らなかったことに触れた、というのは、自分の中でも大きかったですね」
ちょうど同じ年に、早稲田大学の大学院のスポーツ科学研究科の中に「エリートコーチングコース」が創設された。1年制の課程ではあるが、「今まではバレーをやってきただけだけれど、これから勉強できるのではないか」と思い、二期生として入学した。担当教諭が男子バレーボール部の松井泰二監督だったこともあり、現場を勉強するための一策として、男子バレーボール部の指導を、多治見監督曰く「お手伝い程度」見るようになった。 並行して、東京を拠点とするGSS東京サンビームス(V・チャレンジリーグⅡ所属)で週に一度コーチとして指導に当たり、大学で学びながら、現場でも、それまでとはまた異なる角度や感性、知識を持ってバレーボールを学んだ。
そして、訪れた「監督」としてV・プレミアリーグ(トヨタ車体)が初舞台。 「監督は初めてなうえに、それがいきなりプレミアのチーム。今は未知の世界です。ほんと、毎日が『初めまして』みたいな感じです(笑)」
とはいえ、これまでの経験で培ってきた財産は数えきれないほどにあり、今、プレミアリーグで戦う選手たちに伝えられることで響くものも多い。「まだまだ勉強中」と多治見監督は謙遜するが、選手たちにも「自分の経験で伝えてくれるのでわかりやすい」と好評だ。 「みんな本当に素直。逆に素直すぎるぐらいです。監督だけでなく、スタイルや選手、何かが変わると少なからず戸惑いがあるはずなのに、それもなくとにかく一生懸命取り組んでくれているので、それをどうにかしてあげたいな、という気持ちは強いです」
皇后杯(全日本選手権)を制したことはあるが、V・プレミアリーグで頂点に立ったことはない。
「チームに合流して、選手に対して『これからはそこを目指すチームになっていくんだよ』と話しました。パイオニアでもお世話になった印東(玄弥)さんや、内田(役子)さん。指導歴も、経験も長く、素晴らしい知識とスキルを持ったスタッフがいるので、みんなで助け合いながら、頑張って行こう、という気持ちでいっぱいです」

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日立とパイオニアで長きに渡りミドルブロッカーとして対角に入った、吉原知子監督率いるJTマーヴェラスとの開幕戦には敗れ、1レグを終え3勝4敗とわずかに1つ、黒星が先行するが、ケガで離れていた選手も復帰し、多治見監督のもとで取り組む挑戦の成果は、少しずつ、新たな芽として見え始めている。
「ポリーナ選手という攻撃の柱がいて、それは間違いなくチームにとって強みですが、でも去年はひたすらポリーナ、と偏ってしまうこともありました。今リーグはそこに荒木(絵里香)も来てくれましたし、日本人選手がどれだけ仕事ができるかがカギになると思うので、1人だけではなく、全員が攻撃に行って、全員で頑張るバレーをつくりたい。みんなで戦って行きたいです」
力を結集して、新たなスタイルを構築する。1つずつの経験を財産に、新生トヨタ車体クインシーズはもっともっと成長を遂げていくに違いない。

※日立ベルフィーユと日立リヴァーレは別のチーム。ベルフィーユは日立武蔵を前身とし、日本リーグ時代から一時代を築いた名門チームで2001年に廃部。リヴァーレは前身を日立佐和とし、茨城県に本拠地を置くチーム。